どん底から栄光を手に入れた歌手

2013.03.12

オトコに見せたいこの映画『ジャーニー/ドント・ストップ・ビリーヴィン』 /第119週(火曜担当/松村 知恵美)

1975年のメジャーデビューから、40年近くにわたり活動を続けているバンド、Journey。

"Any Way You Want"、"Open Arms"など、誰もが一度は耳にしたことのある名曲も多く、洋楽ファンならずともその名前と曲を知っている人は多いでしょう。
大人気学園ドラマ「glee/グリー」でカバーされた曲"Don't Stop Believin"は、なんと2011年の世界最多ダウンロードを誇るそうです。

そんなJourneyですが、結成以来何度もメンバーチェンジを繰り返してきました。
1977年にスティーヴ・ペリーがボーカリストとして参加しバンドの黄金時代を築きましたが、彼が1998年に脱退して以来、二人のボーカリストを迎えるもののなかなか定着せず...。
2006年からバンドは休業状態となっていました。

その休業期間、メンバーは何をしていたのか?
Journeyのギタリスト、ニール・ショーンはYouTubeでボーカリストを探していたのです。

そして、そんな彼の目に留まったのが40歳のフィリピン人シンガー、アーネル・ピネダでした。
この映画『ジャーニー/ドント・ストップ・ビリーヴィン』は、そうやって伝説のバンドの一員となった"シンデレラ・ボーイ"、アーネル・ピネダの姿を追うドキュメンタリーです。

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cm_20130312_02.jpgステージでコピー曲を歌っている姿をYouTubeで見た伝説のバンドのメンバーが、「素晴らしい歌声だね、君こそ探していたボーカリストだ」と声をかけてくる...。
アーネル・ピネダに起こった出来事は、未来を夢見る若者が想像する夢物語そのままです。
アーネルは、まさに何千万人に一人しか手に入れられない幸運への切符を手にしたのです。

しかし、カメラのインタビューに答えるアーネルは、決して浮かれてはいません。
アジア人である自分がアメリカを代表するバンドJourneyのボーカリストになることに対するアメリカ人の反感や、伝説的バンドに加入したどこの馬の骨ともわからないボーカリストに対するファンの期待や反感をよく理解し、急に手に入れた栄光に浮き足立たず、調子に乗らないよう自制しています。
しかし、決して卑屈になることなく、どんな時も最大限のパフォーマンスを発揮し、バンドのメンバーやファンの期待を裏切らないよう、常に100%以上の結果を出せるよう、努力を重ねていくのです。

そして、弾けるような躍動感あふれるライブパフォーマンスで、これまでのジャーニーのライブにはなかった新たな魅力を加え、旧来のファンを納得させ、新たなファンを獲得していきます。
現在のところ、アーネルは見事に人生を賭けた勝負に勝っていると言えるでしょう。

貧しい家庭に育ち、マニラでストリート・チルドレンとして路上で生活していたホームレス経験や、麻薬に溺れた経験もあるというアーネル。
ボーカリストとして泣かず飛ばず、苦労しながら生きてきて、40歳になって突然大きな幸運を手に入れた彼の人生は、まさに「事実は小説より奇なり」という感じ。
その波瀾万丈な人生に、思わず驚嘆してしまう人も多いと思います。


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劇中では、アーネルを迎えたジャーニーのメンバーも、ロックスターとしての成功と引き換えになくした代償について語ります。
スターとしてきらびやかなステージに立ち、高額の報酬を得てしまったが故に支払った、大きな代償。
それを支払ってきた彼らが、これからそれを支払うであろうアーネルを言外に導いていく様子も、かなり興味深いものでした。


ジャーニーというバンドが積み重ねてきた歴史、アーネル・ピネダというボーカリストが生きてきた人生、それらすべてが交錯し、ライブという形に昇華させて見せたこのドキュメンタリー映画『ジャーニー/ドント・ストップ・ビリーヴィン』。
"Don't Stop Believin"という曲名が、まさにこのドキュメンタリーに登場するアーネルとジャーニーのメンバーのこれまでの軌跡を表しています。
本作を観れば、ジャーニーのファンではなかった人も、きっとこのバンドに興味を持ち、新しいアルバムを聴いてみたくなることでしょう。

劇中で見られる情熱的なパフォーマンスの数々も素晴らしく、ライブに参戦しているような感覚も味わえるこの作品。
ジャーニーのパフォーマンスを楽しみつつ、音楽業界の光と影、人生の不思議を実感できる、見応えのあるドキュメンタリー・ムービーです。

(松村知恵美)


『ジャーニー/ドント・ストップ・ビリーヴィン』(105分/アメリカ/2012年)
原題:Don't Stop Believin': Everyman's Journey
公開:2013年3月16日
配給:ファントム・フィルム
劇場:新宿ピカデリーほか全国にて順次公開
公式HP:http://journey-movie.jp/


<STORY>
1973年に結成された伝説のバンド、ジャーニー。2007年、ギタリストのニール・ショーンはジャーニーのボーカリストを務められる才能を探していた。そして、YouTubeでフィリピン人シンガー、アーネル・ピネダを見つける。その歌声に惚れ込んだメンバーはアーネルをジャーニーの一員として迎える。そこから、伝説的バンドの一員になるというアーネルのアメリカン・ドリームが始まる。そこには素晴らしい栄光と大きなプレッシャーがあった...。


監督・製作・脚本:ラモーナ・S・ディアス
出演:アーネル・ピネダ/ニール・ショーン/ジョナサン・ケイン/ロス・ヴァロリー/ディーン・カストロノヴォ


(C)2012 Everyman's Journey, LLC.

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