"父になる"ために必要なもの

2013.09.24

オトコに見せたいこの映画『そして父になる』 /第142週(火曜担当/松村 知恵美)


「いつかは父親になりたい」
「今よりもっと立派な父親になりたい」

そんな風に思っている男性は、多いのではないでしょうか。
でも、"父親"とはいったいどんな存在なのか、はっきりとした答えを持っている人は少ないかもしれません。

そんな人たちに、ぜひとも観ていただきたいのが、この映画『そして父になる』。

自らも父親となった是枝裕和監督が、福山雅治、リリー・フランキーという二人の俳優を迎えて、"父と子"というテーマに挑んだ、静かで優しい問題作です。


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この作品で描かれるのは、6年前に病院で赤ちゃんを取り違えられていたことがわかった、ふたつの家族の物語。

一方は、都心の高層マンションに親子3人で住み、私立小学校のお受験に成功したセレブファミリー。
もう一方は、群馬の地方都市で電気屋を営み、祖父、両親、子どもたちの計6人で賑やかに暮らす、庶民的な家族。

正反対の暮らしをしてきた家族は、6年間一緒に暮らしてきた"息子"が自分の子ではなかったことを知り、苦悩します。
そして、この2家族は交流を重ね、本当の親子という"血"を選ぶのか、6年間積み重ねた"時間"を選ぶのか、答えを出そうとするのです。


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この映画を観た人は、誰しもが自分が主人公の立場だったらどうするか、考えてしまうことでしょう。

"時間"を選んで遺伝子的には自分の子ではない息子を育て続けたとしたら、もし息子が自分の思うように育たなかった時や、自分より優秀でなかった場合、「本当の息子だったら...」と考えてしまうのではないか?
"血"を選んで息子を取り替えたなら、"育ての息子"を捨てた罪悪感に苛まれてしまい、"実の息子"を可愛がれないのではないか?

どちらの息子を選ぶにしても、親は悩み、苦しみます。
でも、それ以上に苦しみ、傷つくのは、取り替えられてしまった子ども自身のはずなのです。


福山雅治演じる主人公は、ある結論を出します。
しかし、どの結論が正しいのかは、結局わからないままなのでしょう。
だから、彼らは、悩み、模索しつづけるのです。


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福山雅治と尾野真千子、リリー・フランキーと真木よう子は、それぞれに子どもを愛しつつも、戸惑う両親を違ったアプローチで演じています。
正解のない問題に懸命に取り組み、自分たちも親として成長していく彼らの姿には、誰もが心打たれてしまうと思います。

カンヌ映画祭で審査員賞受賞に相応しい、"家族の在り方"という普遍的なテーマに斬り込んだ、2013年必見の一作です。


(松村知恵美)


『そして父になる』(120分/日本/2013年)
英題:Like Father, Like Son
公開:2013年9月28日
配給:ギャガ
劇場:新宿ピカデリーほか全国にて
公式HP:http://soshitechichininaru.gaga.ne.jp/


<STORY>
大手建設会社のエリート社員・野々宮良多は、息子・慶多の私立小学校合格に喜びながらも、彼にもっと強くあって欲しいと思っていた。ある日、慶多の生まれた病院から、慶多と他の赤ん坊を出産時に取り違えてしまったらしいという連絡が入る。良多と妻のみどりは、自分たちの本当の息子である琉晴を育てていた斎木雄大・みどり夫妻と会うことに。斎木は群馬で電気店を営んでおり、琉晴を筆頭に三人の子どもたちと賑やかに暮らしていた。


監督・脚本・編集:是枝裕和
撮影監督:瀧本幹也
出演:福山雅治/尾野真千子/真木よう子/リリー・フランキー/二宮慶多/黄升炫/中村ゆり/高橋和也/田中哲司/井浦新/大河内浩/風吹ジュン/國村隼/樹木希林/夏八木勲/ピエール瀧/吉田羊


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