はじめての能〜演目「夕顔」

2013.10.17

白翔會は、能楽師・坂井音重師の芸術活動の後援を目的として活動している団体です。

日本の大切な伝統文化である『能』を少しでも多くの方に知ってもらうため、
毎週、ひとつずつ能の演目を紹介して参ります。

◆能【夕顔】

〜物語〜

豊後国の僧(ワキ)が都の寺を廻るうち、五条辺りにさしかかり、女性(シテ)が和歌を吟ずる声に足を止めます。僧が処の謂れをたずねると、女性は、ここは「何某の院」の跡ですと答えます。その昔は融大臣が住まわれ、「河原の院」と呼ばれ、時代が下り「源氏物語」の中ではただ「何某の院」とだけ記されてた場所と詳しく教えるのでした。やがて乞われるままに、夕顔君と光源氏の出会いや、夕顔の儚い運命を語り、夢に参りましょうと姿を消します。(中入)

 

僧の弔いに引かれ、在りし日の姿で現れた夕顔の霊。法華経の功徳で成仏することを喜びつつ静かに舞い、夜明けとともに姿を消します。

〜舞台展開〜 

名ノリの笛の音につれて、ワキ(僧)が従僧(ワキツレ)と共に登場し、都の仏閣を廻り、五条辺りにさしかかった由を述べます。

 

会釈(アシライ 小鼓・大鼓のみ)の囃子で、前シテ(女)が登場し、橋掛かりの一の松で和歌を口ずさみます。僧が処の謂れをたずねると、紫式部が「源氏物語」のなかで「何某の院」と書いたところで、その昔は源融の邸があった場所と教えます。夕顔君が亡くなった「何某の院」の跡と知った僧は、さらに「夕顔の巻」の物語を所望します。女は舞台中央に座して物語り(クセ)、やがて静かに立ち上がり、「夢にて来りて申す」とワキに向かい、姿を消す態で中入します。

 

間狂言(所の者)の語りの後、〈一声〉の囃子につれ、後シテ(夕顔の君)が現れます。長絹(広袖の衣)と緋大口(袴)姿です。荒れ果てて恐ろしい「何某の院」で命を落とした身も、今僧の弔いの力で成仏できる事を喜びつつ舞〈序之舞〉を舞い、夜明けとともに姿を消します。

 

 

〜鑑賞〜 

夏の終わりの夕方に咲きはじめる夕顔の花は一夜きりの花です。その花を介して出会った光源氏と夕顔の君は、お互いの素性を明かす事無く結ばれます。夕顔の隠れ住む辺りは庶民の町。静かな逢瀬を求めて、光源氏は「何某の院(源融の邸)」に夕顔を連れ出します。荒れ果てて木立も鬱蒼として、恐ろしげな漆黒の闇。物の怪が現れたと見るや、夕顔の命は風の前の灯火の様に消えてしまいます。原作の雰囲気をそのままに、儚いゆえに美しい夕顔の君を描いた作品です。

(白翔會)

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