はじめての能〜演目「頼政」

2013.11.14

白翔會は、能楽師・坂井音重師の芸術活動の後援を目的として活動している団体です。

日本の大切な伝統文化である『能』を少しでも多くの方に知ってもらうため、
毎週、ひとつずつ能の演目を紹介して参ります。

◆能【頼政】

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諸国を巡る僧が、奈良に向かう途中、宇治の里に立ち寄ります。この宇治は名所の多い所、僧を呼びとめた老人はあたりの名所を親切に教えてくれます。さらに平等院に案内して扇の形に刈った芝を見せます。ここは源頼政の終焉の地であると言い、自分は頼政の幽霊であると明かして消え失せます。

 

僧の弔いに現れた頼政は、出家した老武者の姿。宇治川を隔てた激しい戦の有様や、ついに敗れて辞世の一首を残して自害した最期を語り、回向を頼んで、扇の芝の草蔭に消えて行きます。

〜舞台展開〜 

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〈名乗り笛〉の音に連れて登場する旅の僧(ワキ)。宇治の里に着き、辺りを眺めていると、幕の内より老人(シテ)が呼びかけます。老人は僧に請われて名所旧跡を教えます。地謡の部分・月に照らされた美しい眺めが趣を添えます。老人は平等院に誘い、扇の芝の謂れを語ります。ここは源三位頼政が戦に敗れ自害した所で、しかも今日は命日にあたるというのです。そして老人は頼政の幽霊と明かして消え失せます。(中入)

 

〈一声〉の囃子で後シテが登場します。面は「頼政」というこの曲専用の面です。頼政頭巾は出家の状態を表し、法被(広袖の衣)・半切(袴)は甲冑姿をを表しています。

 

舞台中央で床几にかけて、戦物語をします。源氏方の筒井浄明や一来法師の奮戦の様子や、平家方の坂東武者、田原忠綱の指揮で三百騎が宇治川を渡河する有様を語るところは、一曲の見どころです。やがて床几より立ち、辞世の一首を詠み自害する様を見せ、僧に弔いを頼んで扇の芝の草蔭に消えます。

 

 

〜鑑賞〜yorimasa03.jpg 

-頼政の最期-

 

平家全盛の世の中で、源頼政は平清盛の推挙により従三位(宮中に参内、昇殿を許される)に叙せられます。それは和歌に秀でたためでした。しかし二年後、頼政は以仁王を戴き挙兵します。宇治川を挟んだ合戦は火を噴くような激しさでした。予期せぬことに五月雨で増水した宇治川を平家の一群が次々に渡って押し寄せます。頼政は以仁王を逃がして奮戦しますが、二人の息子たちも次々に討たれ、ついに自害します。頼政は辞世の歌の中で我が人生を、花を咲かせることもない「埋もれ木」に譬えています。しかしこの戦を期に源氏は次々に挙兵し、歴史は大きく動いて行くのです。源三位入道頼政、治承4年(1180年)5月26日没、享年76。

(白翔會)

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