かご舟作りの盛衰、南中部沿岸の伝統を守って

2016.02.12

夏の暑い日、南中部沿岸地方ダナン市のトクアンビーチを横切ると、竹を割る音が聞こえてくる。竹製のかご舟を作っているのだ。

 ソンチャー区トクアン街区に住むファン・リエムさんは、ダナン市で唯一、今もかご舟作りの伝統を守っている職人だ。「もう70歳になるが、これが家族の主な収入源なのでまだこの仕事を続けているんです」と彼は打ち明けた。

 リエムさんによると、30年前はかご舟の作り手が30世帯以上あったが、きつい仕事で収入も安定しないため、より安定した仕事を求めてほとんどの人が辞めてしまったのだという。

 「とても大変な仕事なので、はじめは私もこの仕事を辞めようと思いました。皆が辞めてしまって1人でやっていくのも辛かった。それで、若かった私はレンガ職人の仕事に就きましたが、やはりかご舟作りの仕事が体に染み付いていたので、また戻って今まで続けています」。

 現在、リエムさんと2人の息子がこの仕事を続けており、家族に安定した収入をもたらしている。この仕事で最も大変なことは、雨が降ることと竹を運搬することだという。「ホアバン郡まで行って竹を買い、車を借りて帰らなければいけません。隣のクアンナム省まで行かなければ買えない時もあります。この時期、竹は少なく買うのも大変なんです」と彼は話す。
 完壁なかご舟を作るために、作り手には器用さが求められる。持ち帰った竹を短冊状に分割し、乾かした後に編んでいく。編み上がったら、防水用の油を塗り込む。この油はヤニで作られており、リエムさんがクアンナム省の山まで足を運んで入手している。かご舟1艘の平均的な価格は200万VND(約1万0700円)だ。

 「以前はクアンナム省ズイスエン郡に住む人たちがたくさんかご舟の作り方を習いに来たが、収入が安定しないため、程なくして皆辞めてしまいました。また、舟を編むには日差しが強くなければいけません。1日晴れで5日雨なら、晴れの1日に5艘作ります。雨季は竹も舟に塗る油も乾かないから、どうしようもないんです」。

 リエムさんのかご舟は、国内の漁民に売られているだけでなく、日本やシンガポール、ドイツなど多くの国にも輸出されている。また、外国人観光客が竹船を気に入り、数十艘も購入して国に持ち帰ることもある。この場所を訪れる外国人向けの観光ツアーでは、ツアーガイドがかご舟作りについて説明している。

 しかし、彼にはまだ悩みがある。「もし私が死んでしまったら、この仕事を継承する人が誰もいなくなってしまいます。そして、このかご舟の作り方を知る人もいなくなってしまうでしょう」。

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