【本気の筋トレ】乳酸は疲労物質?

2014.01.15

高強度の運動を一定時間以上続けると、筋肉は疲労します。そのときジワーっと広がるような疲労の感覚を「乳酸が溜まった」というように表現することがありますね。また、スポーツドリンクやあるサプリメントのうたい文句として「疲労物質である乳酸を取り除く」なんていう表現が使われていたりします。こうしたことから「乳酸は疲労物質である」と漠然と考えている方も多いのではないでしょうか。

人間の身体は基礎代謝(生命機能を維持する上で必要なエネルギー)に加えて、身体活動の強さ・長さに応じてエネルギーを供給する主な3つの仕組みが備わっています。

1.ATP-CP系(無酸素系)
2.解糖系(無酸素系)
3.水素伝達系(有酸素系)

唯一酸素を利用し、かつ最も大きなエネルギーを生み出すのが3のシステムですが、他の2つに比べてエネルギーが出来上がるまでに時間がかかってしまいます。よって、急な高強度の運動については、3のシステムではエネルギー供給が間に合いません。そこで1や2が主な供給源になります。人間の身体はハイブリッド車よりも供給系が充実した高性能なエンジンを持っているということですね。

1は最も早い供給系で、元々身体に蓄えられているエネルギー源を使うシステムです。すぐに利用できるのですが、蓄えられる量が比較的少なく、すぐに枯渇してしまいます。それでも運動が続く場合、2のシステムへの依存度が高まります。そして2の解糖系を利用した結果生じる物質の一つが乳酸です。
つまり、高強度の運動を行なうから乳酸が出る、というのは間違っていないということになります。乳酸が出ているというのは疲労するほどの運動をしているということと同じだからです。


しかし、この一見悪者にされそうな乳酸にも、実はとても大切な役割があります。今回はそのうち2つだけ説明します。

1.身体を強化する刺激となる
2.エネルギー源になる

ひとつ目ですが、乳酸が産生されると、これが刺激となって筋肉を増強する機能が高まります。筋肉を増強する因子はこれだけではありませんが、刺激の1つということです。筋肉を肥大させることを目的として筋力トレーニングを行なう際には、この乳酸が分泌されていることが1つのポイントになります。つまり、身体を強化するシグナルとなるわけです。乳酸が出ている感覚というのは誰でもなんとなく理解できると思いますから、明確な指標になるでしょう。

ふたつ目ですが、急激な運動に対してエネルギー供給が追い付かないと乳酸が産生されるシステムを使うわけですが、これが終了すると、有酸素系のシステムの中で乳酸が分解され、エネルギーとして活用されます。つまり、乳酸はエネルギー源にもなるわけです。
乳酸が分解・活用され、血中濃度が低下すること(元の濃度に戻っていくこと)を『乳酸のクリアランス』と表現される場合があり、この機能が優れている、つまり元の濃度に戻る時間が早い人は「回復能力が高い」と言えます。高強度の運動を比較的長く続けることができるし、回復も早いということです。400~1500mの中距離選手はこの機能がとても優れています。

以上のことから、確かに乳酸は疲労するときに出てくるものですが、乳酸自体にも身体にとって重要な役割を持っているということがおわかりかと思います。そして乳酸が出ている感覚は誰でも感じ取ることができるので、筋肉をつけたい、回復力を高めたいなどのトレーニングの目的がある場合は一つの目印になるでしょう。乳酸が生じるレベルの運動は高強度でキツさを感じるかもしれませんが、定期的にそれくらいの刺激を与えておくと体力の維持・向上につながることになります。

胸筋をつけたい方は腕立て伏せを乳酸が溜まるまで。

(木村 繁)

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