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【映画のすゝめ】『脳内ニューヨーク』人生をやり直せるとしたら?/第9週(日曜担当/みながわえみ)

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NAVIGATOR:みながわえみ 

2009.11.22

 映画や物語のみならず、何かを理解したもしくは、面白いかどうかと自分なりの見解を持つには、因果関係や辻褄を把握することが前提として必要になる。一度注意を払ってしまったが最後、その対象について「なるほど、そういうことか」と腑に落ちたい欲求はそう簡単にはぬぐえない。しかし、人生は「辻褄」が合わないことも多く、何かに納得したと思ったところで一つの解釈にすぎない。さらには「自分の解釈」すら、実は、他人の価値観や判断基準を気にしながら生み出されたもので自分のものとは言い切れないものになっていることもある。

 

 

『脳内ニューヨーク』は、普段私達が無意識にしている物の見方そのものに挑戦状をつきつける一言で言ったら「分からない映画」だと思う。結果どうなったのか分からない、オチのない分からなさではない。描かれていることがあまりにも豊富で、想像の世界を描かれているようにも見えるのに圧倒的な現実感と共感がある。そんな想定外の混乱をもたらしてくれる作品だ。

 

 

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© 2008 KIMMEL DISTRIBUTION, LLC  All Rights Reserved 

人気劇作家ケイデン・コタード(フィリップ・シーモア・ホフマン)は、画家の妻アデル(キャスリーン・キーナー)と娘のオリーヴとの3人で暮らしていた。地元の劇場で上演中の演劇は高い評価を受け、生活には何ひとつ不満など無いように思えた。しかし、個性のない舞台演出を続ける夫の姿を見てアデルは失望し、娘を連れて家を出て行ってしまう。

 

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© 2008 KIMMEL DISTRIBUTION, LLC  All Rights Reserved

 失意のどん底にあったケイデンにも転機が訪れる。マッカーサー・フェロー賞(別名"天才賞")を受賞した知らせが舞い込んできた。人生に行き詰まりを感じていた彼は、賞金の全てを注ぎ込んだ、前代未聞のプロジェクトを実行する事を決意する。それは、現実のニューヨークの中に、自分の頭の中にある"もうひとつのニューヨーク"を作りだすことだった。その構想に惹かれ、次々と俳優、スタッフ達が集結した。しかし、俳優たちには、「この舞台が、いつになったら上演がはじまるのか」いつまでたっても告げられない。稽古を始めてから、既に17年もの月日が流れていた。

 

 

 

超巨大な倉庫の中に作られていく、彼の"脳内ニューヨーク"を舞台に、真実と現実の区別がつかないような世界を作り出そうとするケイデン。彼は俳優たちに、"舞台のニューヨークの中に自分の人生を構築し、再現する"ように指示する。そうして創られていく演劇の出演者には、ケイデン役を演じるサミー(トム・ヌーナン)の姿もあった。ケイデンは己の人生そのものを演劇にしようとしていたのだ。

 

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© 2008 KIMMEL DISTRIBUTION, LLC  All Rights Reserved

 だが、いつのまにか現実と"もうひとつのニューヨーク"との間で、人間関係が複雑に絡み合い、ケイデン自身もいつしか自分の作り出した、 "もうひとつのニューヨーク"から抜け出せなくなっていた。一体、この舞台はいつ上演されるのか?上演方法はいつまでたっても見つからない。一人の演出家が作りだしたプロジェクトは、彼の人生と共に、どんな結末を迎えることになるのか・・・。

 

 

 

自分の頭の中にあるNYを本物のNYの中に作ろうとしている時点で奇想天外な話である。但し、主人公のケイデンは結婚生活が破綻し、自身も次から次へと苦しい病気に冒されて行くなど、人生が崩壊しつつあった。毎日が刻々と過ぎて行く中、自分は人生において何も重要な事を成し遂げずに死んで行くのではないかと不安に思い、壮大なプロジェクトに取り組むことを決意したのだ。死や失望、病気やうまくいかない恋愛など誰もが抱え得る悩みや不安、そして何のために生きるのかという問いに対して、誰のどんな人生も唯一無二で人生の主役はあなただけなのだということを教えてくれる。

 

 

 『マルコヴィチの穴』、『エターナル・サンシャイン』の天才脚本家チャーリー・カウフマン初監督作品。「何回観てもその度に新しい発見のある作品を作ろうと思った。」というカウフマン監督の企図通り、納得のいくまで何度でも見てみたい作品です。

 

 

『脳内ニューヨーク』公式サイト

11月14日(土)、渋谷シネマライズほか、全国ロードショー

配給:アスミック・エース

 

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