◆マーク・ホガース氏 インタビュー 老舗ブランド作りの極意

2015.03.27

◆ハリスツイード協会クリエイティブ・コンサルタント兼
ハリスツイード・ヘブリディーズ社クリエイティブ・ダイレクター
マーク・ホガース氏  インタビュー vol.1

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長い伝統を持つブランドが、現在も人気を維持する秘密とは?
クリエイティブ・ディレクターが語る、老舗ブランド作りの極意

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メンズ・レディース問わずジャケット、コートやスーツ、バッグなど様々なファッションアイテムに取り入れられているテキスタイル「ツイード」。数あるツイードブランドの中でも、高品質で知られる「ハリスツイード」を管理する英国ハリスツイード協会が今年紋章発行100周年を迎えます。日本にも創業100年以上で、今も人々に愛される老舗が数多くありますが、ハリスツイードはまさにスコットランドの伝統であり、文化そのものだと言えます。多くの企業やブランドがおきては消えゆく中で、100年もの長い間人々に愛され現代においても支持されるにはどんな理由があるのでしょうか?




今回、ハリスツイードブランドの本家である、ハリスツイード・ヘブリディーズ社のクリエイティブ・ダイレクター、マーク・ホガース氏にお話を伺いました。ホガース氏は、2009年度「TheVOGUE.COMスコットランテキスタイルブランド賞」の受賞によりハリスツイード・ヘブリディーズの急成長への貢献を認められ、2009年10月にスコティッシュスタイルアワードを受賞するなど、ビジネスの実績も上げた実力者。さらにロンドン、東京、香港、シドニーで国際ファッションモデル業も行うなど、ファッション界で精力的に活動を続けるマーク・ホガース氏に、ハリスツイードの魅力や伝統産業における新たな取組みについて語って頂きました。
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◆まず、ハリスツイードについて教えてください。ハリスツイードを作る職人さんは何人くらいいらっしゃるのでしょうか?

110人ほどですね。すべて品質管理からなにから卓越した職人ですが、数としてはそれほど多くないです。ただし、職人の平均年齢が56歳。これは将来的な危機につながるので、我々も投資をして新しい世代・若い世代に後継するような施策は取っています。




◆日本でも生地職人の高齢化・減少が問題になっていますが、どんな対応をされているのでしょうか?



施策としては非常に複雑なプロセスになりますが、ハリスツイードは世界でも唯一の国会の制定法で保護されているテキスタイルなのですね。その目的は生地自体の保護と、その周辺の文化の保護の2つの目的です。英国の国会での政策は具体的にはデザインやハリスツードの質を守るというものになりますが、そのための条件が色々あります。100%羊の新毛だけを島民の家で紡がれたものだけが対象になるなどですね。



そして、私共は政策に頼るのみでなく、大学の教育施設と一緒にタイアップして、専門の織る技術を学ぶコースのスポンサーとして支援を行っています。この織る技術は修得が大変難しく2~3年ではものにならないので、4年コースのカリキュラムです。今も20人の若者が学んでいます。おそらく、日本の歌舞伎の伝承の仕組みやミュージシャンを育む仕組みと同じで、技術だけでなくハリスツードに関連する文化も学び、習得できるようにサポートしています。





◆ハリスツードのどんな点が評価されているとお考えですか?

5年前まではテキスタイルもファッションもデザインもブランドに対して重きを置きすぎていたと思います。水のボトルでも有名ブランドの名前が書いてあるだけで買っていたのが、この流れは変わってきていますよね。消費者も、メディアもファッションの専門家も名前だけでなく「その製品がどう作られているのか」というプロセスを重視するように変わりつつあります。



この変化のおかげもあり、ハリスツイードはここ2~3年注目を集めています。我々の製品は自然志向で道徳的にも非常に良いものです。次世代のテキスタイル・デザイナーも我々のプロセスを評価してくださっている。実際に今年の1月のドリス・ヴァン・ノッテンの2011年の秋冬のコレクションのうち50%~60%がハリスツイードを使ったものでした。パリのファッションショーでナンバーワンの扱いをして頂き、自然志向であることやテキスタイルの美しいデザインについて紹介をしてくれています。



各社は最近環境にやさしいことに取り組もうとしていますが、我々は最初から環境を意識した取組をしてきています。これは日本の伝統工芸も同じような考え方でやってきているのではないでしょうか。



◆差別化のポイントはどんな点にあるのでしょうか?



ハリスツイードの生産のプロセスは卓越したものです。議会で制定された法律を順守し、子羊のウールだけを使っています。その羊もスコットランドのある特定の場所で飼育された羊たちで、いわゆる有機栽培の草を飼料としている羊しか使っていません。さらに、ウールの選別も手作業で行い、このプロセスの中でも機械を使いません。50年間ハリスツイードで働いている二人の職人が手だけで選別しています。競合の企業は機械で選別しているところもあるようですが、我々は徹底して職人の手で作ることにこだわっています。



1974年にある職人が織り機の一部を機械化して紡いでいることを協会が見つけましたが、その人は即刻クビとなりました。それくらい厳しい基準を持ち、紋章を守るために全てのプロセスが厳密に守られています。これが、他のツイードとの差別化になっているのです。






◆ツイードといえばハリスツイードというくらい有名で、しかもプロセスも非常に複雑なのに、比較的良心的な価格ですよね。その理由や努力されている点を教えてください。



一つは、アメリカのマーケットの価格がグローバルマーケットの値段自体を決める傾向があるので、その影響はあります。他の要因としては、ヘブリディーズ諸島の島民の特性もあると思います。ヘブリディーズ諸島の島民は3万6千人程度ですが、スコットランドの他の地域とは別の文化を持っています。非常に純朴で自然志向の強い島民なので、そのため自分たちの生活に必要なものだけを持ち、その生活を維持するためだけの利益があればよいという考え方で、利益を出していこうというような考えはこれまであまり持っていなかったということも言えます。



◆ハリスツイードに新たな価値を付加するために取り組まれていることはありますか?



日本の消費者は知識があってよくご存知ですが、一般的にはハリスツイードというと「オジサンの物」というイメージがあります。それを解決するために私は、協会にスポンサーになって頂いて、若いデザイナーを起用したファッションショーを行いました。英国の放送局BBCでもドキュメンタリーの番組を作って頂きました。要は、テキスタイルのプロダクトがどんなに良くても最終製品が良くないと売れないので、最終的なデザインに踏み込んだ活動を展開し、若い皆さんの目に触れるような施策を打ってきたのです。車もどんなに素晴らしいアルミの材料を使っても車の自体のデザインがよくないと売れないのと同じですよね。



◆ハリスツイードの紋章は100年間ずっと同じものなのでしょうか?

この紋章は今年100周年で、英国で一番古いものです。バーバリーやキースアンドホークスよりも古い。若い方では、ビビアン・ウエストウッドのロゴに似ていると感じる方もいますね。一時期スコットランドでも著作権の問題が起こりましたが、サークルの形や十字架の大きさなど違いがあります。私自身もビビアン・ウエストウッドは好んで使っていますし、若い人がハリスツイードの紋章を見てビビアン・ウエストウッドを想起してくれるのは我々にとっては良いイメージにつながると思っています。ハリスツイードは100年この紋章を守ってやってきていますので、その伝統は確かなものです。タグの色はこれまでに2~3回変わりましたが、今年は100周年記念なので金色のタグを作るなどのアイディアもでています。





◆スコットランドにおいて、ハリスツイードはどのような立ち位置にあるのでしょうか?また、どのような文化をもたらしてきたとお考えですか?



ハリスツイードはスコットランドのものですが、もっと具体的にいうとヘブリディーズ諸島にアイデンティティを持っています。この諸島は、言葉も人種もちょっと違い、特別な歴史も持っています。スコットランド人としてというより、この諸島の特性に根ざしたものだと言えます。さらに、ハリスツイードは歴史的に英国の紳士の文化にも影響を与えています。50~60年代のテレビ広告では、ハリスツイードは中流家庭のユニフォームといえるくらい有名なものでした。さらにジョン・F・ケネディが有名な写真で着ていたジャケットもハリスツイードです。ハリスツイードのアイデンティティがローカルであり、ナチュラルであり、インターナショナルでもあるということが魅力の要因になっているのではないでしょうか。




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◆MarkHogarth(マーク・ホガース)氏プロフィール

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CreativeConsultant,HarrisTweedAuthority(HTA)

CreativeDirector,HarrisTweedHebrides(HTH)

SeniorConsultant,MangerstaLtd.

ハリスツイード・ヘブリディーズ(HarrisTweedHebrides)に在職してから、400%のビジネス実績を上げる。彼が手がけたプロジェクト(コラボレーションや再ブランディング)は、2009年度TheVOGUE.COMスコットランテキスタイルブランド賞を受賞。ハリスツイード・ヘブリディーズの急成長への貢献を認められ、2009年10月、スコティッシュスタイルアワードを受賞した。また、MangerstaLtd.にて、ブライアン・ウィルソン氏(RtHonBrianWilson:元英国エネルギー担当大臣)担当コンサルタント業務も務めている。エネルギー関連および社会行政マネージメント分野に携わる。ウェストミンスターの地では、ウィルソン氏のリサーチャーとしての経験(2001-05年)も持つ。他にも、パートタイムだが、ロンドン、東京、香港、シドニーで国際ファッションモデル業にも携わる。アルドロサンアカデミー、ストラスクライド大学を卒業、地理学部・政治学部学士取得。2007年、ポストグラデュエイト・ディプロマ(ジャーナリズム専攻)を取得。

趣味は、読書、サイクリング、サッカー。

英国ハリスツイード協会 :http://www.harristweed.org

ハリスツイード・ヘブリディーズ社 :http://www.harristweedhebrides.com

スコットランド国際開発庁 :http://www.sci.co.uk

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